ホーム][目次][P7

14 Oct.2011
Plitvička Jezera


スロヴェニア、ハンガリー、ボスニア・ヘルツェゴビナと国境を接し、アドリア海をはさんでイタリアと向き合う
地理的条件がそのまま政治の難しさを表しているような九州の1.5倍の国土を持つクロアチアの
イストラ半島から旅を始め、北のスロヴェニアへ足を延ばした後、再びクロアチアへ戻り、
ザグレブからプリトヴィツェに入りました。
ブーメランのような形をした国の真中のプルトヴィツェ湖群国立公園がこの日一日を過ごした場所です。
(私達の旅はこの後、アドリア海に沿ってザダルからドゥブロヴニクまで南下していきます。)

1979年に世界自然遺産に指定されたプリトヴィツェ湖群国立公園は、
地図が示すようにボスニア・ヘルツェゴビナとの国境に近く、セルビア人が多く住んでいた地域で、
90年代に内戦場となったため、1992年に危機遺産に登録して緊急保護措置を取って、
湖群を地雷原マップから外して環境を守り、内戦終結後に整備を行ない、
1997年に危機遺産リストから外されたという経緯を持っています。



メイン・エントランス・インフォメーション


                       【 地図:旅名人ブックス 「クロアチア」 日経BP企画 】

空に雲がたれ込めた朝で、気温も最低1℃、日中9℃という寒さでしたが、天候対策をしっかり取って、
ホテルを8時半にバスで出発し、北端に位置するメイン・エントランスからハイキングを始めました。

展望台から下に降り、大滝を見て、休憩所まで歩いた後、コジャク湖をエントランス(月)まで船で渡り、
ホテル・イエゼロに戻って、バスでランチ・レストランまでというのが午前中のメニューで、
フリータイムの午後は公園内を走る電気バスでプロシチャンスコ湖北端まで行った後、
湖に沿っていくつもの滝を見ながら、ゆっくりと下りのハイキングを楽しみました。


展望台からの景観


展望台に出ると、噂に違わない、期待感高まる自然美が広がっていました。
自在に流れる滝と神秘的な色合いを見せる湖が得も言われぬハーモニーを見せています。
右写真に見える湖を隔てる堰堤は石灰華が自然に造り上げたもので、今は遊歩道となっています。



野生シクラメンと水滴       水滴を留めた花びら


標高637mのプロシチャンスコ湖から標高483mのサスタヴツィまでの間に16の湖と92の滝があり、
湖にはそれぞれの標高を示す標識が立っていました。
公園内で一番大きな滝ヴェリコ・スラプは落差78mのスケールですが、
この時期は水量が少な目ということで、ダイナミックさには少し欠けていたようです。
大滝はプリトヴィツェ川と合流してコラナ川となり、クパ川、サヴァ川、さらにドナウ川へと流れをつなげて行きます。


 
高い所へ登る習癖持ち・・・


整備された木道に沿って湖畔を歩いている中に、時々陽が差して、天候が味方をし始めてくれました。



ブナやモミの原生林に包まれた294.82k㎡の公園には植物1267種、鳥類161種、蝶類321種など
多種多様な生物が生息しているそうですが(公園パンフレットより)、
冬の訪れが近い季節的なものと、年間80万人が訪れるという整備された周遊コースの環境のせいか、
生物との出会いはそれ程多くありませんでした。

写真は湖に3種類生息するという川マスの中の腹部に黄色の斑点を持つものと、
オペラ歌手ミルカ・トルニナが1897年にザグレブ公演をした時の出演料をプリトヴィツェ保護協会に寄付したという
ガヴァノヴァツ湖の湖畔にあったレリーフです。



19C始めに湖畔の岩をダイナマイトで爆破して造ったという土の遊歩道も歩きながら、
日差しの中で、あざやかさを増す黄葉や紅葉を楽しみました。



石灰華段丘の研究に貢献したチェコ人ヤナーチェクを顕彰したプレート


ミラノヴァツ湖の滝を抜けると、まもなくコジャク湖の休憩所が見えてきます。
公園管理の人達でしょうか、焚き火をしながら焼いている大きなソーセージがとても美味しそうでした。



休憩所に着くと、煙突から煙を出している建物が見えましたので、早速、覗きに行きました。
炭火の上に並べて焼かれているのは・・・。



子豚です。

魚、鶏・・・とサイズが大きくなるにつれ、辛くなる丸焼き姿ですが、美味しさの誘いには負け、
感謝と共に・・・となってしまう訳です。



お茶を飲んだり、売店を覗いたり、ゆっくり30分ほどフリータイムを過ごした後、
電動ボートで20分余り遊覧しながら、コジャク湖を横断しました。




湖畔から歩いてホテル・イエゼロに戻った後、バスに乗って、再び北のエントランスへ行き、
近くのレストラン「リチュカ・クチャ」で少し早目の11時半からランチとなりました。
メインの焼き立ての子豚のグリルが美味しかったのは言うまでもなく・・・。




1時間のランチ・タイムの後、ホテルに戻ってフリータイムになり、一休み組とハイキング続行組に分かれました。
私達はそのままホテル下から電気バスに乗ってプロシチャンスコ湖近くのST4まで行きました。



ヨシやガマの群落が湖畔に広がる一番上の湖プロシチャンスコ湖から少しずつ景色を変える湖を順番に見ながら
午後の湖畔ハイキングがスタートしました。


様々な滝


実りの秋


ヴェリコ湖の滝


虹!


ガロヴァツ湖からグラディンスコ湖へ抜けるあたりからホテル・イエゼロを遠望できました。
1億数千年前に形成されたカルスト地層を流れる川の水に高濃度で含まれる炭酸カルシウムで出来た石灰華が
川の水をせき止めて造り上げたのがプリトヴィツェ湖群の景観ですが、
ここに降った雨水は石灰岩に濾されながら地下の粘土砂岩層に到達し、泉として湧き上がる時、
再び石灰岩層を通って濾過するために、ますます透明度を増すそうです。
世界平均の30倍の速さで成長すると言われるプリトヴィツェの石灰華ですが、
水中の倒木や岩に付着する石灰華もまた水のろ過作用の役割を果たしています。
コンパクト・デジカメでも写し取れるこの透明度は比類ないものだと思われました。




プリトヴィツェの自然現象を最初に研究した学士院会員イヴォ・ペヴァレックが
「水、湖、滝および森林はほとんどどこにでもあるが、プリトヴィツェ湖群は一つしかない」と
1937年に語ったという顕彰碑もありました。



3時頃、電動ボートでコジャク湖を渡り、ホテルへ戻りました。


昼食後、休憩なしでハイキングに向かったツアーメイト達は電気バスまでは同行しましたが、
その後、もっと行動的な組、写真をゆっくり撮る組など段々にばらけて行って、
その中間あたりでペースを共にした6人組で、ホテル・イエゼロ前で記念写真を撮りました。




ホテルのロビーの一角に置かれていた絶滅が危惧されているプリトヴィッツェのシンボルのヒグマはく製


7時からの夕食は川マスのグリルとフルーツサラダでした。
最高の、とはいかないまでも、時々の日差しが余計に紅葉を際立たせる湖畔風景の中をハイキングして、
すっかりリフレッシュされ、旅の折り返し点の小休止のような素晴らしい一日が終わりました。


目次][P7