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22 Mar.2012
 Hamedan〜Takab〜Takht‐e‐Soleyman〜Zanjan


ハマダンからザンジャンまで330km北上した6日目は、
前の週にイラン全国を襲った寒波によって1.5mの積雪があったという地域を通過するため、
う回路を取る可能性もあり、6時にバッゲージアウト、7時出発と早めに一日が始まりました。

旅の中盤に入り、スルードライバー&ガイドのフセインさんとムハンマドさんとも馴染み、
「本当はご家族とノウルーズ休暇を過ごしたかったんでしょうね。」などと微妙な?会話も始まりました。
朝食後、6時半過ぎに外へ出てみると、まだ夜が明けていませんでしたが、
昨日、夏時間が始まったばかりで、まだ5時半と考えれば不思議ではない暗さです。



出発後、刻々と明るくなっていく車窓には、見飽きない雄大な山岳風景が続きました。
広いイランの国土の西部、ザグロス山脈の周辺地域は、
人類最古の文明の発祥地のひとつとなったことが理解できる豊かな自然に恵まれているようでした。


 
 

標高が高くなるにつれて、N添乗員さんが「写真を見せてもイランとは信じてもらえないでしょうね」という
雪景色に変わって行き、やがては雪の中のドライブへとなりました。
と言っても、寒さはそれ程でなく、頭に巻いたウールのマフラーが暑く感じられるほどでした。


広場の中心の大きなモニュメントと信号のないロータリー交差点が特徴的なイランの典型的な町、
タカブに12時前に到着し、レストランでランチとなりました。
表通りから少し入った小さな水溝のある路地もイランらしい生活感を漂わせている感じでした。




お馴染みの大麦スープの他、干しブドウやコーンが入ったキャベツのサラダと豆入りのシチューに、
少しバリエーションが見られたランチの後、12時45分にタカブを出発しました。



季節の風物詩とも見える荷台いっぱいにみかんを積んだ車、広い大地を歩くちょっとドラマチックな4人組など
バスの中でも大体電源をオンにして、何にでもシャッターを向ける私のカメラはバッテリーの消耗が激しく、
夕刻ホテルに入ったら、先ずバッテリーの充電が日課という旅の毎日でした。



50分ほど走って、ゼンダネ・ソレイマンの麓で写真タイムが取られました。
ゼンダネ・ソレイマン(=ソロモン王の牢獄)には、イスラエルを統一した父ダビデの後を引き継ぎ、
王国の絶頂期を築いたソロモン王(在位:BC965−925年頃)が噴火する火を鎮めたという言い伝えがあり、
山頂の火口には石組が残り、ゾロアスター教の祭祀が行われていたと言われています。
旧約聖書に登場するソロモン王はイスラムにおいても重要な預言者の一人とされています。



さらに10分ほどで、2003年に世界遺産に指定されたタフテ・ソレイマンに到着しました。
右写真はだぶだぶズボンとカラフルなスカートが特徴的なクルド人一家です。



雪でぬかるんだ少し足場の悪い道を登って、
タフテ・ソレイマン(=ソロモン王の玉座)の城壁の中へ入って行きました。





城壁の中にはソロモン王が怪物を封じ込めたという伝説の湖と古代神殿が残る見事な景観が広がっていて、
雪化粧までほどこされた美しい姿は神秘的ともいえるものでした。


   

削られた湖岸から城壁の外へ向けて作られた水路を水が勢いよく流れるのが見られましたが、
直径100m、水深60〜120m、水温18〜20℃の湖は水量が常に一定に保たれている湧水湖です。



アケメネス朝以来の歴史を持つといわれるタフテ・ソレイマンに現在残るもっとも古い遺構は
パルティア時代のゾロアスター教神殿跡で、その後、ササン朝時代に多く造られた建造物を
7世紀末にビザンチン軍が破壊、続くイスラム時代には放置され、
イル・ハン朝時代(1258−1353年)にアバカ・ハンが修復して、夏の離宮とした後に再び荒廃、
1819年になって英国の旅行者が発見するまでは存在すら忘れ去られていたと言われています。

ホスロー2世のイーワーン(アーチ型の開口部のある大広間)や、アーチが特徴的なササン朝神殿、
ササン朝の材料を利用したイル・ハン朝の八角形宮殿などの修復が進んでいる様子でしたが、
雪が深く、見学路が制限されて、ゆっくり近付いて見ることは出来ませんでした。



城壁の間からゼンダネ・ソレイマンを遠望


「こんなに雪が降ってるとは思わなかったよ」とイヤホン・ガイドに流れるムハンマドさんのぼやきを聞きながら、
外の見学を早めに切り上げて、博物館へ向かいました。



1937年に撮影した航空写真

見取り図

小さな博物館でしたが、写真や地図、ササン朝のコイン、イスラム時代の陶器、モザイク・タイルなど、
興味深い展示物を見て回りました。



15分ほどの博物館見学後、20分のフリータイムがありましたので、もう一度、湖畔の景色を堪能してから、
3時20分に集合場所の駐車場へ向かいました。




この時出会った人達がメールアドレスと共にメモ帳に添え書きしてくれたペルシア語は「良い旅を!」と
ムハンマドさんから教わりました。


しばらく続いた雪景色



出発して間もなく出会った除雪中のブルドーザー運転手にムハンマドさんが道路状況を尋ねると、
幸いにも、峠の閉鎖は解除されているとのことでした。



峠越えをする度に景色が変わり、雪が浅くなったかと思うと、再び深くなったり、色合いも様々で
退屈を感じない3時間の山間ドライブでした。



ザンジャン州の州都ザンジャンのグランド・ホテルに6時20分に到着、
ホテル前の広場で開催されていたノウルーズ祭りを見物に出掛けたツアー仲間もいたようですが、
私は夕食までの小1時間、長距離ドライブの疲れを休めて過ごしました。




トルコ、アゼルバイジャンに近くなった地域性か、この頃から、大麦のスープに代わって、
ポタージュ系のスープが増えていきました。
毎回付いていた主食のナンのたまに出会った焼き立ての味は忘れられない美味しさでした。


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