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013・8・26
十和田湖〜奥入瀬渓流〜八甲田ロープウェイ〜青森   
                           

朝5時20分頃、十和田山(1054m)から朝陽が昇って来ました。

十和田湖は日本で12番目の面積(61ku)を有する湖で、
1908年(明治41年)に雑誌「太陽」に掲載された大町桂月の「奥羽一周記」などをきっかけに観光地として注目され、
昭和11年には十和田国立公園(昭和31年からは十和田八幡平国立公園)の指定を受けています。





宿泊した「十和田ホテル」は、幻となった昭和15年の東京オリンピックを前に外国人観光客のための宿として、
政府の要請で建てられたホテルのひとつで、秋田・青森・岩手から宮大工80名が集められ、
秋田杉、ケヤキ、ブナなど地元の森林資源をふんだんに使って昭和11年に着工、13年に竣工、
当時のままに残る木造3階建ての本館は、平成15年に登録有形文化財、平成19年に近代産業遺産に認定されています。

私達が泊まったのは鉄筋コンクリート造りの別館でしたが、長倉謙介氏がヨーロッパ視察に出掛けて設計した
半割りの丸太を組んだ和洋折衷の外観、宮大工が腕を競ったといわれる屋内の意匠など一見に値する本館の建築でした。

  

7時15分頃に大広間へ行くと、昨夜伝えてあった和食、洋食の希望別に朝食が用意されていました。
(2テーブルに分かれても、朝は湖ビューのレストランの方が気持が良かったという気も・・・。)




8時半過ぎにホテルを出発する時、「縦、横、アップで3枚お撮りします」と、このホテルのホテル・ドアマンの仕事のひとつの?
写真撮影タイムがありました。



「八戸市鳥瞰図」  −吉田初三郎−

十和田湖は2〜3万年前の十和田火山の噴火によってカルデラの原型ができた後、
1万年前の噴火によってカルデラ内部に五色岩火山が形成され、5400年前の噴火でその火口壁が崩壊して第1カルデラ湖水が流入、
第2カルデラ湖を形成したという世界的にも珍しい2重カルデラ湖です。

デフォルメされた吉田初三郎の鳥瞰図ですが、奥入瀬渓流の成り立ち、1万数千年前には青森までも火砕流が到達したという
長い歴史をイメージするには役立ってくれそうな絵巻です。




十和田ホテルを出発した後、乙女の像に寄ってから、宇樽部(うたるべ)の「GURILAND」へ向かう予定でしたが、
9時の予約時間が押し気味でしたので、今回は乙女の像見学は割愛することにしました。




十和田湖国立公園指定15周年を記念して青森県が制作を依頼、高村光太郎(明治16年−昭和31年)の最後の大作と称されるのが
湖畔に佇む「乙女の像」で、昭和28年10月に除幕式が行われています。

写真は10年前、2003年4月に十和田湖を訪れた時のものですが、
私のデジカメ初代機OLYMPUS CAMEDIAの131万画素(一桁違い・・・)が懐かしい一枚です。



9時10分ほど前に「GURILAND」受付に到着し、全員がライフジャケットを装着して、乗り込もうとしているのは・・・


イギリス製の軍用RIBボートで、海上保安庁などで使っているものと同種のエンジン付き高性能ゴムボートでした。
約70分で大人5千円(子供は千円 予約割引価格?)は少し高いとも思われましたが、
他ではできないアドベンチャーということで、先ずは体験してみることに意見がまとまりました。



今回は2艇が同時スタートし、水しぶきを上げる40ノット(観光船としては国内最速)のスピード体験をしました。
「揺れます」というのは、「揺らします」のことのようで、船体を傾けて疾走させる時は、絶対に転覆はしないとは言われても、
「デジカメ片手に」などと悠長なことは言っていられないスリルがありました。


 

謎の風穴東

剣岩

無論、アドベンチャーだけのボート・ツアーではなく、小さなゴムボートを活かした自然観察もあり、
十和田湖にふたつある半島、御倉半島と中山半島の間にある第2カルデラ湖の中湖(なかのうみ 最大水深327m)を中心に、
普通には近付くことができない断崖直下の様子を観察しました。

謎の風穴がある千本松、剣岩の松などは土のない岩の上に生えているため、一定以上は成長することがなく、
100年前の絵と比べてもほとんど変わらない姿を見せているそうです。



イトムカの入り江

十和田神社占い場
 
十和田湖はトー≒湖、ワタラ≒岩だらけ、トムカ≒光り輝く水が湧き出る場所、トーピラー湾≒湖の崖など、
周辺にはアイヌ起源と考えられる地名が多く残っているそうですが、
このボート・ツアーによって発見されたという湖底からの湧水の様子が見られるイトムカの入り江では、
運が良ければ、ツキノワグマやカモシカが水を飲む姿に出会えるそうです。
動物に出会う確率が高いのは木々の葉が繁らない春か秋で、今頃は向こうからこちらを見ているのかもしれません、とのことでした。

紙垂(しで)付きの注連縄をまわしたヒノキや岩があるのは紙の浮き沈みによって運を占うという十和田神社占い場で、
ここから山上に向かうと十和田神社の本殿があります。

 
屏風岩

柱状節理が破壊に向かっているような屏風岩はもろくて、くずれやすいことが目にも明らかな岩肌で、
細かい石状になった箇所も見られました。



五色岩

烏帽子岩

鉄分など鉱物質の多さが見て取れる五色岩、太陽の角度によっては頂上が小熊に見えるという烏帽子岩など、
特別保護区とされる中湖の断崖沿いを、ゆっくりとボートを進めて見学しました。



謎の洞窟

テーブル・ロック


洞窟内の彫像?

このボート・ツアーによって発見され、謎のひとつに加えられたのが、
東日本大震災後、十和田湖の水位が20cmほど低下した2011年8月に発見された神代ケ浦の洞窟です。
対岸の同緯度地点にキリスト教礼拝堂があること、車で1時間の距離の新郷村戸来にキリストの墓があるという伝説と合わせて、
これはかつての隠れキリシタンの洞窟であり、中にあるのはキリスト像とも言われていますが、
天然岩であるか、人工物なのか、いまだ真相は解明されていないそうです。
 30年前に外国人調査グループによって発見された湖底ピラミッド「御門石」の頂上と、
キリスト像?が湖面標高400mのほぼ同位置にあることなど、謎に満ちた神秘の十和田湖です。

人がまだ登ったことのない300mの絶壁のテーブル・ロックの下に位置するトーピラー湾は、
十和田湖内で最も湧水量が多く、自生のシラカバが群生していて、周辺より2℃ほど気温が低いと言われ、
近くで新種のクワガタが1匹だけ見つかったことも謎のひとつとされています。



湖底の地形調査を行っている会社が2010年8月に中湖の湖底に沈む航空機を確認、その引き上げ作業が2012年8月に行われ、
機体は1943年9月27日に墜落した旧陸軍の訓練・輸送機「一式双発高等練習機」と判明、
墜落時の乗員の教官1名と少年飛行兵3名の中、1名の少年兵はたまたま漁に出ていた旅館主に救助されていますが、
他の3名は行方が分からず、今回、機体内から発見されることもなかったそうです。
水深300mあまりの湖底に沈んでいたジュラルミン製の航空機は、年間を通して4〜5℃という水温に守られ、ほとんど腐食もなく、
全長12m、翼幅18mの機体を3部分に分断して引き上げ、戦時中に約1300機製造された陸軍機中、唯一現存する機体として、
現在、青森県立三沢航空科学館に展示されています。

陸上からは見ることができない断崖絶壁に囲まれた景観を見て、いくつかのミステリーに触れ、40ノットを体感して、
のんびりとした遊覧船とは一味違った刺激的なボート・ツアーでした。


10時15分に下船して、子供達にとって、この旅で最も印象深かったというエキサイティング体験が終わりました。
(前席を志願したものの前の手すりに手が届かず、実は、かなりな恐怖体験でもあったようですが・・・。)

10時半に次の見学地、奥入瀬渓流へ向かいました。
宇樽部川ほか神田川など3〜4本の小河川が流入している十和田湖は、太平洋まで67km流下する奥入瀬川だけが出口となっていて、
湖畔の子ノ口(ねのくち)から焼山までの約14kmが観光名所として名高い奥入瀬渓流です。


銚子大滝

九段の滝

車道と共に遊歩道が整備されている渓流沿いを車、徒歩を交互に織り交ぜながら、散策しました。
十和田湖を銚子に見立てた時、その注ぎ口にあたることに滝名が由来すると言われる高さ7m、幅20mの銚子大滝で下車、
十和田湖から直接落ちる唯一の滝から渓流観光を始めました。
写真でも見られるように、ほぼ直角に切り立っている大滝を魚が上ることは不可能で、
かつては魚が生息していなかった十和田湖に現存するヒメマス、サクラマス、ワカサギなどの魚類は放流によるものだそうです。

トチノキ、サワグルミ、カツラなどが繁り、涼しく、気持の良い落葉広葉樹林の中を散策しながら、
断崖を落ちる九段の滝、不動の滝などの水景色を楽しみました。



今回の家族旅行にはカメラ4台とビデオカメラ1台が集まったのですが、時間設定がまちまちで、同定には少々の苦労をした後、
カメラを向けている先は  →→→   白糸の滝と判明しました。



子ノ口にある制水門によって放流を調整し、安定した水量を保つことによって、溶結凝灰岩の浸食によって生まれた岩場に
200種を超える苔が育ち、その上に実生木が生えるという奥入瀬渓流独特の景観が形造られたそうです。



大滝から白糸の滝まで45分ほど散策した後、最も水量が多いと言われる高さ20mの雲井の滝まで車で移動、
3段になって落ちるダイナミックな姿を堪能しました。



 
最後に奥入瀬渓流の人気スポット、怒り狂いを意味する「阿修羅の流れ」を見て、奥入瀬散策を終えました。

    
ノブキ                   ウバユリの実              ヤマアジサイ
   
  
キノコとカメムシ   −A・I−


12時過ぎに奥入瀬渓流に唯一建つホテル、焼山の星野リゾート奥入瀬渓流ホテルに到着しました。
エントランスを入ると、岡本太郎作の高さ8.5m、重さ5tのブロンズ製の暖炉「森の神話」が置かれた吹き抜けラウンジがありました。
西館ラウンジには女神を表した高さ10m、重さ7tの岡本太郎の遺作(平成8年4月完成)となった暖炉「河神」もあるそうで、
庭園の彫像「かっぱ」などと共に、岡本太郎ワールドが楽しめるホテルのようです。


  

このホテル・ラウンジでのランチ・メニューは、青森りんごのペーストとはちみつを加えて煮込んだカレーに、
りんごの果肉・果汁を入れて炊き上げたごはん、季節の野菜を添えた少し辛口の「奥入瀬りんごカレー」でした。



1時過ぎにホテルを出発して、高知県出身の大町桂月が終の住処とし、お墓も現存するという蔦温泉を通って、
八甲田ロープウェイ山麓駅に2時前に到着しました。



標高670mから1300mまで10分ほどで上るケーブルカーの車窓の上部は厚い雲に覆われていましたが、
下半分には津軽平野と青森市街、陸奥湾、津軽・下北両半島などがきれいに見えていました。



山麓の気温は21℃、田茂萢岳(たもやちだけ)山頂駅は14℃で、寒さが心配されましたが、
北八甲田連峰を見ながら、アオモリトドマツ、ハイマツなどが北国の山らしい景観を見せる自然遊歩道(八甲田ゴードライン)の
60分コース、1.8kmほどを歩いている中に汗ばむ程になりました。


田茂萢湿原

変わりやすい山の天気

    
アカモノの実                  カニコウモリ                         ムシカリ
  
  
キンコウカとナナカマド      −A・I−


ブナ林

酸ヶ湯温泉

ミニハイキングを楽しんだ後、3時45分に八甲田ロープウェイ山麓駅を出発し、
酸ヶ湯(すかゆ)温泉でソフトクリームやおでんのブレイク・タイムを入れて、5時過ぎに「ホテル青森」にチェックインしました。


陸奥湾を一望するホテルの部屋から眺望を楽しんだ後、
シャワーを浴びたり、ビールを飲んだり、それぞれにゆっくりひと休み、6時半頃、街中へ夕食に繰り出しました。



ネット予約を入れてあったのは、「ここ一軒で青森県。」という「津軽じょっぱり漁屋酒場」というお店で、
「おじさんが来るお店みたい」と小2の孫がつぶやいた通りの賑やかな居酒屋でした。


    

   

    

魚刺身、馬刺し、キンキ塩焼き、ホヤ、いか下足揚げ、長芋唐揚げ、もずく酢、にんにく黒焼き・・・と続いた居酒屋メニューを
昨年、B-1グランプリで一位を獲得したせんべい汁で締めくくった夕食となりました。
9時15分頃、歩いてホテルに戻り、盛り沢山な一日が暮れました。


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