[ホーム] [目次][P10

 
Nov 3 2006
Grein〜Linz〜Engelhartszell
 
雪景色のドナウ −グレイン上流−
 
昨夜停泊したグレインはすっかり雪景色で、ちょっと気の早いクリスマス・プレゼントのような美しさでした。
船は7時に出航、7時半頃に林の間から太陽が昇って来ました。
 

   
水門通過
 
グレイン一帯は岩山が立ちはだかり、河床には花崗岩の岩石がごろごろとしていて、
かってはドナウで一番の難所として知られた場所だったそうで、地名のグレインは恐怖で顔をひきつらせるという
ドイツ語‘グライネン’から取られたと言われています。古代ローマ人は貨幣を投げ込んで川の神ダヌビウスに
航行の無事を祈り、旅人は頭からバケツ1杯の水をかぶって安全を祈願したという‘洗礼式’の迷信が
現代まで行なわれていたそうです。爆薬で河床の岩を粉砕し、障害物を取り除き、
1959年にグレイン下流のイップス・ペルゼンボイクにダムを作って水面を高め、川幅を広げることによって
全く安全な航行が出来るようになったのだそうです。(「ドナウ河紀行」加藤雅彦著)

その急流は姿を消していましたが、この辺りの水門の多さが、治水の苦労を物語っているようでした。
9時半頃、初めて日中に水門を通過しましたので、デッキからのんびりと水門見物を決め込みました。
10メートルの高低差があるというこの水門を通過するのには、約30分を要しました。
下流域のハンガリーが渇水で運行不能でも、
オーストリア国内はこのようなシステムで余程の異常がない限り航行が可能となっているのだと思われました。
   
 
展望ラウンジでは恒例のナプキン折り教室が開かれました。
旅のつれづれに(?)新しい形を考案している様子のレストラン・マネージャーのチャバさんですが、
右の形は使い道があるのかどうかは分かりません。
 
 
リンツが近付くにつれ、川辺に工場群が見え始めました。
12時頃ニーベルンゲン橋近くの船着場に到着し、昼食後、1時半頃から、ウィーン、グラーツに次ぐ、
オーストリア第3の都市リンツ観光に向いました。

紀元前にはケルト人が住み、古代ローマ帝国時代に砦が築かれたリンツが
史料に初めて現われるのは、8世紀末のことだそうです。
13世紀にハプスブルク家の支配下となり、1485年にハンガリーのマーチャーシュ王の襲撃を受けた
神聖ローマ皇帝フリードリヒ3世は、難を逃れてウィーンからリンツへ宮廷を移したそうです。
現在は鉄鋼業などで繁栄、オーストリアの経済を支えている人口19万人の工業都市です。
 

 
 

アプト式でなく軌道式として、ヨーロッパで最も急な鉄道としてギネス・ブックに登録されているという
木製の小さな登山鉄道に乗ってペストリンクベルクの丘に登りました。
高級住宅街に林やぶどう畑が点在する雪景色を見ながら、15分ほどで終点に到着し、
降り出した雪の中を、足元を気にしながら、ゆっくりと巡礼教会まで登っていきました。

 
ペストリンクベルク巡礼教会
 
ペストリンクベルク巡礼教会の中を見学して外へ出ると、またもや幸運なことに雪が止んでいて、
思いがけず、眼下に広がるリンツの街並みやドナウ河の眺望に出会え、
ニーベルンゲン橋の近くに停泊するセレナーデ号も確認することが出来ました。
登る時は雪が降っていて何も見えなかった所に忽然と現われた景色ですから感動もひとしおでした。
 
 
再びこのような道を下って駅まで戻りましたが、滑った人が1人もいなくて、本当に幸いでした。
ドナウの秋だけでなく冬体験までしてしまい、ちょっと辛かった雪も寒さも、今ではとても良い思い出となりました。
 

 

ハウプト広場
   
バスに戻って、リンツ市内を車窓観光しました。
新婚のモーツアルトがコンスタンツァを同行してザルツブルグへ向う途中ここに寄り、
「リンツ交響曲」を3日間で仕上げた、薬局を経営する弟を訪ねたベートーベンが「交響曲8番」を完成させた、
リンツ生まれのブルックナーは旧大聖堂のオルガン奏者であったなどという音楽家にまつわる話を聞きながら、
ゆかりの建物や新旧ふたつの大聖堂など旧市街を見て回りました。
残念ながら、こちら側のビューポイントでは、曇り空にかすんだ景色しか見ることが出来ませんでした。

リンツの街の中心地、ハウプト広場で下車して少し自由時間が取られました。
トルコ、ペスト、大火がおさまったことに感謝して造られた白い大理石の三位一体の像が
バロック、ロココ様式の美しい建物に囲まれたハウプト広場の真中に立っていました。
ブルックナーのレリーフが刻まれた旧大聖堂の脇を通り、ショッピング街に出て、お土産を物色したり、
少し街歩きをして、4時過ぎバスに乗って、帰船しました。
 

 
リンツ市街 満月?
   
セレナーデ号は4時半に出航し、今夜の停泊港エンゲルハーツェルへ向いました。
ブダペストでは三日月だったのが、いつの間にか丸くなった月が5時過ぎに昇って来ました。

展望ラウンジで6時半からさよならカクテル・パーティが開かれました。
34名のクルー全員が制服姿で登場したり、O駐在員さんからNトラベル添乗員さんのエピソードが紹介された後、
シャンパンで乾杯、私達のクルージング旅を支えて下さった方達へ心からの拍手を送りました。
 

 
 
船長主催さよなら夕食会のメニューのラインナップです。
サーモンのタルタルソースの前菜、マッシュルームとねぎのクリーム・スープ、グリーン・サラダ、
リコッタチーズのトルテリーニ、ビーフ又はロブスターのメイン・ディッシュ、デザートは氷河風アイスクリーム。
写真を見るだけでもお腹一杯・・・ですのに、これだけをしっかり胃に収められたのは、
旅マジックとでもいうものでしょうか。(因みに体重の増減はなかったことをこっそり?ご報告しておきます。)
 

 
 

夕食後、ビンゴゲームのお楽しみ会が開かれました。
ハンガリー民族衣装で女装して現われたK添乗員さんの感想は「足がスースーして寒い」でした。

8つ用意されたプレゼントの6番目に私がビンゴ!目移りして困りましたが、
K添乗員さんが選んだステンドグラス風のハンドペインティングの小さな額と目が合って?無事決定。
残り2つも、Kさんや同じテーブルの方がゲットして、楽しいお開きとなりました。

 

目次][P10