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Oct 10 2005
Toulouse〜Moissac
 
トゥールーズの街並み

パステルの葉
キャピトル広場の朝市
 

トゥールーズは、パリ、マルセイユ、リヨンに次ぐフランス4番目の都市で、人口45万人を擁するそうです。
フランス最古の大学がある文化都市であると同時に、コンコルドやエアバスなど航空機や宇宙産業でも有名です。
98年のサッカー・ワールド杯の日本とアルゼンチン戦の街として記憶されている方もいらっしゃるかもしれませんね。

建材にする採石場に恵まれなかったため、街を流れるガロンヌ川の川底の粘土で作ったレンガ造りの建物が
立ち並ぶ街は、陽が当たるとピンク色に輝き、‘バラ色の街’と呼ばれているそうです。

街の中心地である市庁舎広場は絶対王政下の市参事会‘キャピトゥール’に因み、
キャピトル広場と呼ばれています。そういう広場に朝市が立ち、普通の日常生活が繰り広げられる所に
ヨーロッパ的な空気を感じました。歴史・伝統と現在の生活が共存し、調和を保っている様子は、
旅行者の気分をも和ませてくれるようです。

右のパステルの葉は市場で売られていたのではなく、ホテルに置いてあった雑誌から借りた写真ですが、
15〜6世紀にヨーロッパでこのパステル(大青)から作られた染料が大流行、トゥルーズやコルドには
パステル産業で財をなした商人の豪邸が今も残っているそうです。
‘パステル・カラー’の語源ともなったこの植物染料は、不作とインディゴの登場によって衰退したそうですが、
近年、栽培から染料作り、染色まで再現され、数世紀振りに復活している様子です。
パステル産業発祥の地で、画家ロートレックの出身地でもあるアルビには画材や布製品などの
パステル・ショップがあるそうですが、トゥールーズに同様の店を探したり、パステル御殿を訪ねてみる余裕は、
残念ながら今回はありませんでした。

   

 
 
3世紀の殉教者セルナンを奉るサン・セルナン聖堂です。
スペインのサンティアゴ・デ・コンポステラへの巡礼のフランス最後の中継点として、
11世紀から14世紀にかけて、最盛期には年間50万人もの巡礼者を迎え、街や教会は大いに繁栄し、
現存するロマネスク教会としては最大級の規模を誇る巡礼路教会となっていったそうです。

左の写真は高い方から順に鐘楼、内陣、周歩回廊、放射状祭室の外観ですが、
身廊の長さ115m、交差廊の上に建つ八角形の鐘楼の高さ67m、聖遺物の数175を数えるといわれる規模は
押し寄せる大勢の巡礼者達を充分に満足させ得たのではないかと思われます。
右の写真は周歩回廊に面した放射状祭室の1部分ですが、真中の祭壇にはサンティアゴつまり12使徒の1人である
聖ヤコブの像がシンボルのホタテ貝と共に飾られていました。
 

   
   

フランス革命の時に破壊されたサン・セルナン聖堂やサン・テティエンヌ大聖堂から移し、
保存した柱頭彫刻などを公開しているのが、14世紀建造の修道院を改造したオーギュスタン美術館です。
ロマネスク期から19世紀までの彫刻や質量共に優れた絵画コレクションもありますが、
何と言ってもこの美術館で見逃せないのはトゥールズ派と呼ばれたロマネスク彫刻の名品の数々です。

左はサロメが洗礼者ヨハネの首を母ヘロデに捧げている場面の柱頭彫刻ですが、
ヨハネの首がふたつあるのは異時同図法と言われる手法で、アニメーションの原型を見るようです。
右は抱いている動物から‘獅子座と牡羊座の女’と呼ばれる浮彫レリーフです。
足を交差させている所が、この地方の石工特有の表現方法なのだそうですが、
石に彫られたとは思えない繊細な表現、デフォルメの妙が目を惹きます。
(時間の少なさ、鑑識眼の頼りなさで、ついつい美術本で見知っていた作品ばかりを追いかけてしまいました。)

 

   
   

トゥールーズ観光の3番目、最後に寄ったのがジャコバン修道院です。
ドミニコ会最初の修道院として13世紀に建てられた早期ゴシック建築で、太い柱に何本もの梁を集めた
アーチ型の天井は後のゴシック建築に大きな影響を与えたのだそうです。
椰子の木を思わせる形や彩色にイスラムの雰囲気を感じました。

 

   
   

トゥールーズの街中のレストランでランチをいただきました。
本日のメニューは何だか不明の臓物が添えられたガスコーニュ風サラダとこの辺の郷土料理‘カスレ’です。
ちょっと臭みのある臓物系は食べきれませんでしたが、ことことと煮込んだ白いんげんに鴨肉やソーセージを
加えて焼いたカスレは食べやすいお料理でした。熱々で、脂もボリュームもたっぷりですので、
寒い季節に時たまいただくのが良さそうです。料理名はこの土鍋‘カソレット’に由来するようです。

 

   

黙示録のキリスト
サン・ピエール修道院聖堂
預言者エミリア ラザロの復活

修道院回廊
最初の修道院長ドゥランドゥスの平彫レリーフ
 

昼食後、トゥールーズの北西60kmに位置するモアサックのサン・ピエール教会へ行きました。
高速道路を使って、片道1時間の距離です。
聖書の石の写本といわれるロマネスク芸術の中でも、とりわけ優れたものが多く残されていることで
有名な教会ですから、今回のツアーで最も楽しみにしている場所の一つでしたが、
写真で見慣れた傑作彫刻の数々は、店舗や家に取り囲まれた街中の巡礼路教会の中に、
拍子抜けするような普通さで残されていて、芸術品は拝むように?観ることに慣れている者には
気分の落差を禁じえないものがありました。でもこれこそがヨーロッパなのだろうとも思いました。

入口タンパンの‘黙示録のキリスト’は、南フランスの写本中もっとも有名な「ベアトゥスの黙示録」と
卓越した才能を持ったモアサックのタンパン制作者が生みだしたタンパンの最高傑作だそうです。
制約のある半円形の中におさめた図柄構成が何より素晴らしい、と・・・。
そして、もう一つの有名な彫刻、タンパン下の中央の柱に彫られた‘預言者エレミア’像や、
フランスで最も美しいと言われる回廊など、美術本の受け売り解説はここでは省略することにして、
ご希望の方には鮮明画像をお送りして、ご自分で鑑賞していただくことにしましょうか。

1時間足らずのフリータイムは、スケッチ派、カフェの白ブドウ・フレッシュジュースで休憩派、
ぶらぶら散策派に分かれて過ごしました。
5時過ぎにトゥールーズのホテルに戻ってから夕食までの2時間余りは、
モワサックで散策派だった私には街に出るエネルギーが残っておらず、全くの休憩時間となってしまいました。

 

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