[ホーム] [目次] [P4]

 
Apr 12 2005
Alexandria
 
 

朝、ホテル前の海岸に散歩に出掛けました。
エジプト人憧れのリゾート地の時代があったというのがうなずける美しい海岸線が広がっていました。
イカやタコ、カラフルな小さな魚を網から外している人達の側で猫が2匹待機していました。

 
 
街には信号がほとんどなく、歩行者は実にうまく車の間をすり抜けていました。
乗り切れないほど人が詰まったワゴンバスを沢山見かけましたが、このバスは低料金で、好きな所で乗降できる
便利な市民の足のようでした。人々は悠々と車道にはみ出してバスを待っています。
・・・・・と、車高の高い観光バスから見る人、車、荷馬車が行き交う街中の光景は、
とてもアラビックで見飽きないものでした。
廃墟同然のようなビルが少なくなく、地中海交易の重要拠点として繁栄した国際貿易都市の面影は
どこへ行ったのだろうと感じたのも事実ですが、人々の持つ生活感あふれたエネルギーのようなものには
未知の世界にエキゾシズムを感じたに過ぎないのかもしれませんが、とても興味を惹かれました。
 

   
   
午前中、最初に行ったのがビブリオシカ・アレクサンドリアという2002年10月にオープンした図書館です。
ノルウェーの建築家集団スノヘッタがデザインした斬新な建物群の真中の広場には、
BC332年にこの町を建設したアレクサンドロス大王の像が立っていました。
古代ギリシア・ローマ時代には人文学のメッカ、アテネのアカデミアと並び、自然科学のメッカであった
アレクサンドリアのムセイオン(ミュージアムの語源)の付属図書館は、様々な文化が出会う場所となるようにと
120言語の文字が刻まれた壁を持つ建物となって現代に生まれ変わったようです。
10層構造を持つ地下では、壮大なデジタル図書館構想が実現中とか。
ユネスコの出資に頼りすぎるエジプト政府に対して、ガイドのKさんはご意見を少々お持ちの様子でした。
   
 

続いて向かったのが、世界初の灯台と言われ、「世界七不思議」の一つに数えられるファロスの灯台跡、
15世紀にマルムーク朝スルタンのカイト・ベイによって要塞として立て替えられた建物です。
1990年代半ばにGPSなど最新技術を駆使したフランスの海底考古学チームによって、近くの海底に、
灯台の一部と1600年ほど前の大地震で沈んだクレオパトラの宮殿跡が確認されたそうです。
海底の宮殿跡が21世紀の‘ポンペイ’として、海底観光ツアーの目玉になるのも夢物語ではないようです。

右側はローマ皇帝ディオクレティアヌスの命で建てたセラピス神殿の付属図書館の跡と言われています。
異教徒の神殿として、391年にキリスト教徒によって破壊される前には400本の柱があったそうですが、
現在は‘Pompey's Pillar’と呼ばれる高さ27mの花崗岩の柱が1本だけ残っています。
何故この柱が1本だけ残されたのか、ポンペイウスの柱と呼ぶ名前の由来などには諸説あるようです。
両側のスフィンクスは、別の場所にあったプトレマイオス期のものを後年になって設置したものとか。
ラクダに乗ったり、ヤシの小屋?の中で警備する警察官の姿が何ともエジプト!という感じです。
観光バスに乗って街中を走っていると、彼らは手を振ったり、投げキスまでしてくれ、
そんなことで大丈夫?とちょっと心配までしてしまいました。

 
 

午前中最後に行ったのがグレコローマン博物館。ギリシア・ローマ時代の遺物が展示されています。
上の左側は伝クレオパトラ像です。鼻が欠けている所が何とも言えませんね。
アレクサンドロス大王の死後300年続いたプトレマイオス朝最後の女王の直筆が、
ベルリンのエジプト博物館のミイラ部屋のパピルス文書の束の中から2000年に見つかったそうです。
BC33年2月23日付けの命令書には「よきに計らえ」と書いてあったとか。

右はユリウス・カエサル。この2人の間に生まれた一人息子のカエサリオンの胸像が、
海底に残されたカエサルの宮殿(カエサリウム)の前から発見されたというニュースが、2001年1月の
「ザ・タイムス」紙上で大々的に発表されたそうです。歴史の舞台から永遠に降りることがない方々のようです。

下の写真は日本に来ると人気者のミイラも、ここアレクサンドリアではひっそりと休んでいる風情の展示室と
博物館内の敷地で発掘品の修復をしている人々の様子です。
海底から引き上げた莫大な数の遺物を脱塩するのは、さぞかし骨の折れる作業でしょうね。

 

   
-TS-

午後はフリータイムの予定でしたが、ガイドのKさんの好意のご案内で、
まだ発掘中のローマ遺跡のオデオン(音楽堂)の真中に立って音響の良さに感心したり、
大混雑のスーク(市場)の中をどきどきしながら見物して歩きました。
往来の激しい道路に面した遺跡での駐車を警官が優先的に誘導してくれたり、市場では学校帰りの男の子が
ずーっとついて来たり、拡声器から流れてくるアザーン(イスラムのお祈りを誘う詠唱)を初めて聞いたり、
スーク近くの駅の構内を見ていると一隅で集団礼拝が始まったり、
今までのヨーロッパ旅行では出会わなかったことにいくつも出会いました。

 

[目次] [P4]