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17 Feb 2007

Fes〜Chechaouen〜Tetouan〜Ceuta

 
   
雨の降り出したフェズを8時20分に出発して、リーフ山脈を越えて北上、一路シャウエンへ向いました。
山のお天気はきまぐれで、降ったり、日が差したり、目まぐるしく変わって行きました。

2時間余り走って、ウェザーンの街で休憩。
オリーブ名産地のこの街はユダヤ人が多く住む街で、シナゴーグもあるそうです。
早目にバスへ戻ると、アシスタント・ドライバーのイドリス君に話し掛けられました。
家族と一緒にマラケシュに住む彼は26歳のベルベル人で、アラビア語とベルベル語はぺらぺら、
フランス語はまあまあ、英語と日本語はちょっとだけということでした。
モロッコでは教育は無料で、大学生は逆に政府から3ヶ月に5万円程の給付金をもらえるそうです。
その代わり進級試験は大変難しく、(日本のように)遊んでいては卒業は出来ないそうです。
その割には卒業後の仕事がないというのが現状だとか。
そう説明をしてくれた42歳のアラミさんはフランス文学と観光学の2つの大学を卒業し、
現在は通訳と翻訳の会社を経営、ガイドは副業なのだそうです。
イドリス君はドライバーの仕事を続けながら、これからもいろんな言語(観光語?)を習得していくのでしょうか。
   
 

車窓から見える景色が段々と荒々しくなり、ほとんど集落も見られない山道を進んで、
フェズから3時間半程で、シャウエンに着き、先ず街の全体が見渡せる丘から写真を撮りました。
シャウエン(正式名シェシャウエン)というのはアラビア語で2つの角という意味で、
山にはさまれた谷間に街が2本の角のように伸びていったことから名付けられたのだそうです。

 

   
シャウエンのメディナ
ハマン広場 カスバ(城塞)
 
15〜7世紀にスペイン・アンダルシア地方を追われたイスラム教徒によって築かれたシャウエンは、
茶色の屋根と白とブルーの壁のコントラストが不思議な印象をかもし出している街でした。

バスを降りて、メディナを歩き始めて少しして生憎の雨模様となったのが残念でしたが、
まるでおとぎの国に迷い込んだかのような街を、雨にもめげず、写真を撮りながら散策しました。
アンダルシア地方とそっくりな建物が並ぶ街並みばかりでなく、声をかけてくる子供達の挨拶が
「ボンジュール!」から「オラ!」に変わった所にもスペインを感じました。
20世紀初頭までスペインの支配下にあり、異教徒が立ち入れなかったために中世の面影を残している
山の中の小さな魅力的な街でした。
 

 
リアド・アトラス・ホテル

シャウエンの街を見下ろすホテルのレストランでランチをとりました。
かなり長時間山道をドライブし、実は夫婦共々車酔いをしてしまったのですが、
乗り物酔いなど子供の時以来という夫は精神的にも参ってしまったようで、
ランチをパスして、ロビーで1人でお茶だけを飲みました。たまに酔う私は割と慣れっこですから、
少しだけチキンの串焼きをつっついたりしました。地鶏の味は良かったのですけれど・・・。
「そんなにデリケートそうには見えないけど。」とH夫人から評された夫は、
旅に慣れた頃出て来る疲れだったようで、その後は毎日アルコール消毒?をしながら、元気に旅を続けました。

 

 
王宮のあるハッサン2世広場
   
モロッコとイベリアの中継地として8世紀から栄えていたというティトゥアンでバスを降り、
ハッサン2世広場やスペイン・ムーア式の建物が並ぶ街を少しだけ歩きました。
王宮には大きな虹がかかっていました。

シャウエンと同じく、スペインのレコンキスタによって追われたイスラム教徒やユダヤ教徒によって作られた
この街のメディナも世界遺産に指定されているそうですが、立ち寄る時間はなかったようで、
4時ごろ街郊外のホテル前で3日間お世話になったアラミさん達と別れ、
スペインのバスに乗り換えてスペイン領セウタへ向いました。
山道が続くバスの中で、日本人ツアーの慌しさに疑問を呈しているうちに、
「人生の目的は何ですか?」とシリアスな話となったアラミさんのガイドには、
日常を離れて異文化を楽しみたいだけの人がほとんどの旅仲間の間に困惑した空気が流れましたが、
「すべての物事のバランスをとるのが宗教です。宗教なしの人生は考えられない。」
「アラビア語は世界一美しい言葉だと思います。」というアラミさんの言葉は覚えておくことにしましょう。

国境越えは写真禁止などとちょっと緊迫した空気が興味深いですが、
ひたすら待つだけの退屈な時間とも言えます。
沢山の荷物を持った徒歩による国境越えの人を待つタクシーの長い列が目を引きました。
   
   
モロッコとスペイン2つの国境ゲートを越えて、夕暮れの地中海を車窓に見ながら、
2泊するセウタのスペイン国営ホテル、パラドール・ラ・ムリャーラに6時ごろ到着しました。
部屋の中からアラブ色がすっかり消えた感じです。私達の部屋はジブラルタル・ビューでした。
 

 
 

ホテル内のレストランでの夕食のメニューは魚のスープ、ポークの煮込み、スポンジ・ケーキでした。
パラドールと呼ばれるスペイン国営ホテルは一定の質は保証されているようですが、
場所によって人気度や質に差があるのは致し方のないことだと思われます。
モロッコにあるスペイン領では贅沢は言えません。・・・・という所でしょうか。

 

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