[ホーム] [目次] [P8]

 
Oct 15 2005
Chauvigny〜St-Savin〜Poitier  
 
ショーヴィニー旧市街を遠望
サン・ピエール教会
 

朝9時にポワティエのホテルを出発して、20km余り東のショーヴィニーへ行き、ゴウゾン城(11世紀建造)や
廃墟となっている司教館の外観を見たり、サン・ピエール教会の中を見学したりしながら、
丘の上の旧市街を散策しました。

サン・ピエール教会のロマネスク柱頭彫刻は、陸海貿易を通して伝えられた北欧、中東、アジア、アフリカの
諸民族、動物などを想像力を加えて怪奇な姿で表現していて、この地方でも特異なものとして知られているそうです。
中世の時代には獅子の身体に鷲の翼を持ったグリフォン、人魚、一角獣、人間の顔をもった怪物など
悪夢のような世界を描くことが、神の支配する世界の不思議を思うことにつながると考えられていたようです。
去年彩色し直されたという内部は信仰の場としては落ち着きが無いのではという印象を受けましたが、
極彩色寺院というのは他宗教でも珍しくないのですから、ロマネスクだけに素朴さというイメージを
押し付けるのは間違っているのかもしれません。

下段の写真は郵便屋さんと小さなオーベルジュです。重厚な石造りの街でちょっとした生活感に出会うと、
ついカメラを向けたくなってしまいます。郵便屋さんは照れくさそうな様子です。

 

 
サン・サヴァン教会

 
ショーヴィニーからまた20km東のサン・サヴァンは昨年のツアーでも立ち寄ったところです。
世界遺産でもあり、「壮大なドラマ サン・サヴァン」とツアー・タイトルにもなっている天井画は、
1960年代に文化相アンドレ・マルローが推進して修復が行なわれたそうですが、
修復し終わった身廊の天井を見たマルローは「フランス、ここに始まる。」と叫んだそうです。
(因みに旅行中に読んだ本のこぼれ話ですが、サンテクジュペリが「星の王子様」に登場させた
ちょっと意地悪な花は失恋した女性がモデルだったそうですが、その女性の恋人はマルローだったとか。
最近「星の王子様」の新訳が出たようですね。)

今年はサン・サヴァン教会は修復中で、天井画を半分しか見ることが出来ませんでしたので、
余った時間を教会裏を流れるガルタンプ川散策で過ごしました。
ポワティエから同行のガイドのダニエル君は100回以上もここに来ているそうですが、
この教会の裏手に来たのは初めてだそうで、「きれいな所だねぇ。」と言っていました。
修復はアンラッキーでしたが、教会の両面を展望出来たのはラッキーなことだったかもしれません。

写真は教会の前庭で立ったまま輪になってランチをとっている聖職者達と、
13世紀からの長い歴史を物語るような風格を湛えた石橋で絵を描いている人達です。
どちらを向いても絵になる風景ですが、切り取っている風景が様々である所が興味深かったです。
 

   
ポワティエ市街を遠望
 
フランク王シャルルがピレネー山脈を越えてきたイスラムの北上を食い止めた732年のトゥール・ポワティエの戦い、
英仏が激戦を繰り返した100年戦争の時など、歴史の表舞台にしばしば登場したのが、
クラン川に囲まれた古都ポワティエです。人口85000人で、ポワトゥー・シャラント地方の中心都市の一つです。

サン・サヴァンからポワティエに戻り、昼食を取ってから、市内観光、というより、ロマネスク教会巡りの一日を
締め括りました。教会には食傷気味の顔も見受けられましたが・・・・。
   

サン・ピエール大聖堂
 
13世紀に作られたフランス最古の聖歌隊席(クワイア)や、フランスで2番目の大きさという3000本のパイプを持つ
オルガンのあるサン・ピエール大聖堂です。
   
サン・ジャン洗礼堂
 
サン・ピエール大聖堂と隣接して、フランス最古のキリスト教建築といわれるサン・ジャン洗礼堂がありました。
この建物は4世紀のローマ人の邸宅を洗礼堂にしたもので、ローマ文化の名残を留めています。
内部にはサン・サヴァン教会と同じスタイルの11世紀壁画などが残っていて、現在は美術館として使われています。

右の写真は、午後の開館時間の2時を過ぎても扉が閉ざされたままなので、携帯電話で問い合わせ中の
ガイドのダニエル君です。その後間もなく、鍵を忘れて取りに戻っていたという女性係員が小走りにやって来て、
無事入館できました。
   

ノートル・ダム・ラ・グランド教会
 
街の中心にある12世紀に建てられたノートル・ダム・ラ・グランド教会です。
寄せ柱でできた左右の円柱、鱗型の尖塔、この地方特有のタンパン彫刻を持たない入口などが特徴的で、
ポワティエ・ロマネスクと呼ばれる様式で建てられています。
受胎告知、イエスの誕生、沐浴など聖書物語が彫られた正面入口扉上の石灰岩の帯状彫刻には、
中近東の象牙彫りの手法も見られるそうです。 ここでもイエスの父ヨセフさんは所在なげに見えます。
16世紀の宗教改革の時にかなり破壊されたそうですが、修復を受けて、ユニークで美しい姿を見せていました。
 

サン・チレール・ル・グラン教会
 
この日訪れた最後のロマネスク教会が、4世紀のポワティエの聖人、チレール司教の墓の上に
1044年頃から建てられたサン・チレール・ル・グラン教会です。大きな周歩回廊を持った巡礼路教会で、
中世には珍しく、ゴルチエ・コルランという建造者の名前が残されているそうです。
 

   

市庁舎前マレシャル・ルクレール広場
ジャンヌ・ダルク像と裁判所
   

教会巡りの一日が終って、5時前からフリータイムになりましたので、土曜日の夕刻で、
大勢の人で賑わうショッピング街へ出かけました。市庁舎、ジャンヌダルクを尋問したといわれる12世紀建造の
裁判所の前などを通りながら、街歩きや買い物を楽しみました。
人々が湧き出してきたような街中でしたが、日本の都会の繁華街に比べ、どこか空気に余裕が感じられたのは、
こちらの観光気分のせいかもしれませんが、若者だけでなく、家族連れ、大人や子供様々な世代が
入り混じっている所に街の健全さが感じ取られたせいかもしれません。
ガールスカウトの女の子達は写真をとるよりもカレンダーを買ってと思っていたことでしょうね。

   
   
歩き疲れたところで夕食時間になり、地元の人達が気軽に食事を楽しんでいるようなビストロに入りました。
ちょっと胃を休めたかった私が選んだのはメニューに一つだけ入っていたスープですが、
私にはちょっと外れの味の冷たいガスパッチョ風の野菜スープでした。
生ハムやチーズの盛り合わせを選び、「後は・・・」というのを制し、とりあえず前菜とビールだけ頼んだ連れ合いも、
この写真のボリュームですから、もう一つ頼まなくて良かったと言いながら、
いつの間にか降りだしていた小雨の中を走ってホテルまで帰りました。
今回は夜は何度か雨が降ったようですが、日中は全く雨にあわない幸運なツアーでした。
 

[目次] [P8]